「ヒアルロン酸注入は、どんな治療?」
「化粧品に入っているヒアルロン酸と、同じもの?」
初めて注入治療を検討するとき、こうした疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
ヒアルロン酸とは、どんな成分?
ヒアルロン酸は、体をつくる成分のひとつ(ムコ多糖類の一種)です1。
体の中では皮膚にいちばん多く、体全体のヒアルロン酸の50%が皮膚にあると報告されています2。目の硝子体(眼球の中を満たす組織)や、関節の中の滑液にも含まれています。
水分を抱え込んで保つ性質が特徴で、体の中では、うるおいを保つ、関節の動きをなめらかにする、組織のすき間を満たすといった働きをしています2。
注入するヒアルロン酸は、化粧品のものと同じ?
化粧品に入っているものと名前は同じですが、お顔に注入するのは、注入のためにつくられた製材です。国内では医療機器として承認を受けた製材があり、「高度管理医療機器」に分類されています1。
注入用の製材では、ヒアルロン酸の鎖どうしをつなぐ加工をしています3。これを「架橋(かきょう)」と呼びます。
架橋されていないヒアルロン酸は、皮膚の中では1日たたないうちに半分の量になると報告されています(半減期)2。分解酵素ですぐに分解されるため、注入してボリュームを補うには足りない可能性があります3。
架橋したヒアルロン酸は、ゼリー状のゲルになります3。分解されにくくなるため、体の中に長くとどまります。
当院で使用する製材
当院では、アラガン社のジュビダームシリーズ(ボルベラ・ボリフト・ボリューマ・ボラックス)と、ガルデルマ社のレスチレン リド・レスチレン リフト リドを使用しています。使用する製品は、カウンセリングでご希望を伺い、お顔の状態を診察したうえで、お一人おひとりに合わせて選びます。
いずれも国内で承認された製材です45。ただし、承認されている治療部位や使用方法は製品ごとに異なり、当院では診察所見に応じて承認範囲外の使用を行う場合があります。その場合は、治療の目的や期待できる効果、リスクなどをご説明したうえで、同意をいただいて治療を行います。
同じヒアルロン酸でも、製材ごとに性質が違います3。製材の違いについては、当院のコラム「ヒアルロン酸の種類」で書いています。
注入したヒアルロン酸は、お顔の中で何をする?
注入したゲルは、ゲルそのものの体積(かさ)と、ヒアルロン酸が水と結びつく性質によって、注入した部位のボリュームを補います45。
ヒアルロン酸注入(ヒアルロン酸注射とも呼ばれます)は、製材や治療目的に応じて、真皮・皮下組織・骨膜上などの層に製材を注入し、しわの改善、骨や脂肪のボリュームが減った部分を補うこと、形を整えることなどを目的とする治療です1。
効果はどのくらい続く?
効果の持続期間は6か月〜2年程度が目安ですが、製材が体内で完全に吸収されるまでの期間とは異なります。部位や製材によっては、それ以上長く残ることがあります。
ヒアルロン酸注入は、しわを埋める治療?
しわを埋めるだけの治療ではありません。顔の加齢による変化には、重力で下がることだけでなく、ボリュームが減ることが大きく関わると考えられています1。
顔がどのように年齢を重ねるか、顔の各部位の構造やつながりについての理解が進むにつれて、ヒアルロン酸の使い方や診察のしかたは大きく変わってきました6。
お顔を全体として見て治療を計画する考え方では、止まっているときの顔だけで判断しません。表情が動いているときに顔全体がどう見えるか、周りにどんな印象を与えるかを大切にします6。
お顔は骨格・脂肪・筋肉・皮膚が重なり合ってできているため、診察では気になる部位に加えて、正面・斜め・横から、そして笑ったときや話しているときの表情も含めてお顔を拝見します。
どこに、どの層へ、どの製材を、どのくらい使うかで、治療の結果は変わります17。この組み合わせを、お顔全体のバランスから決めていきます。
たとえばほうれい線が気になる場合でも、まず頬骨や上顎骨などの土台から考え、ほうれい線そのものへの注入は最後の仕上げとして検討する、という順番をとることがあります。この順番については、当院のコラム「ほうれい線にヒアルロン酸、『気になるところ』に入れればいい?」でも書いています。
当院では、部位ごとのメニューではなく、お顔全体のバランスを踏まえて治療をご提案します。顎・こめかみへの注入も、ご希望と診察所見を踏まえ、お顔全体の治療計画の中で必要に応じて行います。
表情をつくる筋肉の動きでできるしわには、ボトックス注射という別の治療もあります1。どちらが合うかは、しわが目立つ理由を診察で確かめたうえで考えます。ボトックスについては、当院のコラム「ボトックス注射とは」で書いています。
注入は痛い?
当院で使用する製材には、いずれも注入時の痛みをやわらげるためにあらかじめ局所麻酔薬(リドカイン)が加えられています45。
さらに痛みがご不安な方に向けて、ご希望に応じて別途局所麻酔の注射をすることや、麻酔クリームを使うこともできます(麻酔の追加費用については、ページ下部の「費用・治療期間」の項目をご参照ください)。
リスク・合併症について
ヒアルロン酸製材の注入で起こる合併症のほとんどは、腫れや痛み、赤み(発赤)などの軽いものとされています1。注入のあとの腫れや内出血の経過は、当院のコラム「ヒアルロン酸注入のダウンタイム」に書いています。
一方で、血管内への誤注入などによって血流が妨げられた場合には、その先の皮膚が壊死するなどの障害が起こることがあり、ときに失明や脳梗塞などの重い合併症が報告されています1。重い合併症を避けるには、顔の解剖を理解し正しい技術を身につけることが重要とされていますが、合併症を完全に避ける方法は現在ありません1。
注入から時間がたってから起こる反応も含め、合併症の詳細や、リスクを減らすための対策は、当院のコラム「ヒアルロン酸注入の合併症」にまとめています。
ヒアルロン酸注入でも、まれにアレルギー反応が起こることがあります1。
使用する製材の添付文書では、次のいずれかに過敏症を起こしたことがある方には使用しないこととされています45。製材の成分、グラム陽性菌由来のタンパク(製材をつくる過程で使う細菌のタンパク質)、リドカインなどのアミド型局所麻酔薬です。
期待できる効果と治療の限界、リスクについては、診察のなかでお伝えします。治療後のご連絡方法は、受診時にご案内します。気になる症状や変化があった場合は、ご案内した連絡先へご連絡ください。
費用・治療期間
- 治療内容:ヒアルロン酸製材の注入
- 費用(税込):1cc 88,000円/2cc 165,000円/3cc 242,000円/4cc 319,000円/以降1cc追加ごとに77,000円
- アラガン社・ガルデルマ社の製材で同じ料金です。製材を組み合わせることもできます
- 針・カニューレ代は施術料金に含まれます
- 施術を受けられる場合、診察料は施術料金に含まれます。診察・カウンセリングのみの場合は5,500円(税込)です
- 局所麻酔(1部位・ご希望時)1,100円(税込)、麻酔クリーム(ご希望時)3,300円(税込)は別途となります
- 自由診療のため、公的医療保険は適用されません
- 治療期間・回数の目安:原則1回の施術で行いますが、お顔の状態や治療範囲、ご希望に応じて複数回に分ける場合があります。追加治療の時期や回数は、経過を確認しながらご相談します。
- 主なリスク・合併症:腫れ・痛み・発赤など。まれに、血管内への誤注入などによる血流障害に伴い、皮膚の壊死や失明・脳梗塞などの重い合併症が報告されています(詳しくは本文「リスク・合併症について」)
使用する麻酔クリームについて
当院では、リドカイン10.56%を含有する麻酔クリーム『LIDO Plus(リドプラス)』を使用しています。本製品は日本国内では承認されていない医薬品です。当院医師が輸入代行業者PRSS.Japan株式会社を通じて個人輸入しています。
リドカインは国内外で局所麻酔薬として広く使用されている成分ですが、本製品自体について、諸外国での承認状況や安全性が十分に確認されているわけではありません。
国内には、リドカインを含む承認済みの外用局所麻酔薬(エムラクリームなど)がありますが、本製品とは成分の組み合わせや濃度が異なります。
主な副作用として、塗布部位の赤み、かゆみ、刺激感、かぶれなどがあります。また、過量使用や広範囲への塗布などにより、まれに全身性の中毒症状(めまい、しびれ、けいれん、不整脈など)が生じる可能性があります。
なお、本製品は国内未承認医薬品のため、原則として医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
ご質問にお答えします
「フィラー」と「ヒアルロン酸」は違うもの?
「フィラー」は英語の filler(満たすもの・埋めるもの)のことで、美容医療では皮膚の下に注入してボリュームを補う充填材を指します。ヒアルロン酸は、その代表的なものです1。
出典・参考文献
本文中の番号と対応しています。
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公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本形成外科学会・一般社団法人日本美容皮膚科学会・一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)・一般社団法人日本美容外科学会(JSAS)『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』(令和3年度厚生労働科学研究補助金。日本美容外科学会会報 2022 Vol.44 特別号)第2章 第2節「シワ・タルミに対する吸収性フィラー(充填剤)注入治療」基礎知識・CQ2-2-1・CQ2-2-2. pp.44-48(112-116). https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyo2v.pdf |最終確認日: 2026-10-03
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