「触ると硬いものがある」 「そこだけボコボコして見える」 「吸収されると言われたのに、なくならない」
ヒアルロン酸注入のあとに起こりうることのなかで、ご相談の多いもののひとつが、この「しこり」に関するものです。これから治療を検討されている方はもちろん、 他院で受けた治療についてのご相談も届きます。
一言で「しこり」と言っても、実はその状態や原因はさまざまです。いつ現れたかによって、考えられる原因も、取るべき対応も変わってきます。 この記事では、不安に感じやすい「しこりの正体」と、その違いについて分かりやすくご説明します。
しこりは、現れる時期によって性質が違う
大きく「注入直後から触れるもの」と「時間が経ってから出てくるもの」の2つに分けられます。
注入した直後から触れるもの
注入してすぐ、あるいは数日のうちに触れるようになるしこりです。
主な原因として、ヒアルロン酸を入れた「層」が浅すぎることが挙げられます。浅い層に入ってしまうと、しこりとして触れたり、皮膚の色が青白く透けて見えたりすることがあります。実際に、国内で承認されている製剤の添付文書にも、次のような注意書きがあります。
注入深度が浅すぎると、腫瘤や青変を生じるおそれがある。3
本品の注入が表皮に近いと、しこりや変色が起こることがある。5
ヒアルロン酸製剤には硬さの違いがあり、その硬さに応じて適した注入層が変わります。硬い製剤は深い層へ、やわらかい製剤は浅い層へ。この対応関係は、国際的な医学文献でも整理されています。
HA fillers with higher G′ must be injected into the deep-fat compartments or the pre-periosteal plane… The HA fillers with intermediate G′ are injected into the superficial fat compartments… Finally, the HA fillers with low G′ are injectable into the dermis.
(訳:G′〔貯蔵弾性率=硬さの指標〕が高いヒアルロン酸フィラーは、深部の脂肪層または骨膜前面に注入されなければならない。……中間のG′をもつものは浅い脂肪層へ注入される。……低いG′のものは真皮内へ注入可能である。)6
つまり、深い層に入れるべき「硬い製剤」を、「浅い層」に入れてしまうと、触れて分かる不自然なふくらみになってしまうのです。これは、製剤の選択と、入れる層の判断が合っていないときに起こります。
ただし、この時期の腫れや硬さには、注入そのものの刺激による一時的な腫脹も含まれます。数日から1週間ほどで落ち着くのか、そのまま残ってしまうのか。この段階では区別が難しいことがあります。
時間が経ってから出てくるもの
注入から2週間以上、ときには数か月経ってから現れるしこりです。医学的には「遅発性結節(delayed-onset nodules, DONs)」と呼ばれています。
この症状について、専門誌は次のように述べています。
Delayed-onset nodules (DONs) represent a poorly understood and generally neglected group of complications. It is not a diagnosis.
(訳:遅発性結節(DONs)は、十分に理解されておらず、おおむね見過ごされてきた合併症群である。これは診断名ではない。)7
ここで重要なのは、「これは診断名ではない」と明記されている点です。原因の異なるさまざまな状態を、「あとから出てきたしこり」という見た目だけでひとまとめに呼んでいるからです。
考えられる原因としては、製剤が移動してしまったこと、遅延型の過敏反応(アレルギー反応)、細菌のバイオフィルム(細菌の塊)、肉芽腫などが挙げられています。どれに当てはまるかによって、適正な治療法はまったく異なります。
また、現れる時期については、別の国際的な合意文書が次のような記載があります。
Hyaluronic acid (HA) dermal fillers, generally considered low-risk, can lead to rare late-onset reactions (LORs) manifesting between 3 and 4 months postinjection, occasionally even as early as 24 h postinjection.
(訳:ヒアルロン酸皮膚充填剤は一般に低リスクと考えられているが、まれに遅発性反応を引き起こすことがあり、注入後3〜4か月のあいだに現れるが、ときには24時間という早い時期に現れることもある。)8
このように、3〜4か月後に現れることが多いもの、24時間という早い段階で現れるケースもあるなど、時期には幅があることが分かっています。
どのくらいの頻度で起こるのか
しこりが起こる頻度は注入する部位によってデータが異なるため、一律の頻度をお示しすることはできません。
参考として、目の下への注入を対象とした系統的レビューとメタ解析をご紹介します。この報告では、輪郭の不整・しこりのプールされた発生率は5.3%(95%信頼区間 1.8〜10.2%)とされています1。同じ解析で、発赤は7.1%、青変は0.9%でした。
ただし、これはあくまで目の下という特定の部位についての数字です。目の下は皮膚が薄く、注入層の余裕が少ない部位であることを踏まえていただく必要があります。
いつまで残るのか、放置していいのか
「このしこりはいつ消えますか?」「そのままにしておいても大丈夫ですか?」
当院でも、こうしたご質問を一番多くいただきます。
時間とともに目立たなくなることはあります。
ヒアルロン酸は体内の分解酵素によってゆっくりと分解・吸収される成分です2。そのため、単純に製剤の量が原因のふくらみであれば、時間の経過とともに自然と落ち着いていくことがあります。
ただし、時間だけでは解決しないものもあります。 前述の遅発性結節のように、遅延型の過敏反応や細菌のバイオフィルムが原因である場合、待っているだけでは変わらないことがあります。原因が違えば、対応も変えなければなりません。
そのため当院では、「いつまで待てばいいか」は診察のうえでお答えしています。 いつ現れたか、どこにあるか、触った感じはどうか、赤みや痛みを伴うか。これらによって考えられる原因が変わるためです。ご不安な場合は、まず直接診察させていただくことをお勧めしています。
なお、部位によってしこりの起こりやすさが違うかどうかについて、当院で確認できた客観的なデータは目の下に関するもののみでした1。部位ごとに比較した資料は、探しましたが見つけられませんでした。 「唇はよく動かすから」「頬は面積が広いから」といった説明を目にすることがありますが、それを裏づける一次資料を確認できていないため、当院からの明言は差し控えております。
溶かすという選択肢
ヒアルロン酸には、他の注入材にない性質があります。それは分解酵素を注射することで、入れたものを積極的に分解できるということです。
ただし、学会の診療指針には、次のように記載されています。
ヒアルロニダーゼ製剤(本邦未承認)を注射することにより,注入されたヒアルロン酸製剤を積極的に分解除去することができるが,その分解程度は製剤によって異なり,分解されにくいものもある。2
ここには、知っておいていただきたいことが2つ含まれています。
ひとつは、この分解酵素の製剤が、日本国内では医薬品として承認されていないこと。もうひとつは、どの製剤でも同じように分解できるわけではないということです。分解されにくい製剤もあります。
また、投与の方法については、次のような実験データが示されています。
We further demonstrated that repeated administration of small HAase doses improved HA degradation kinetics over large single doses.
(訳:さらに我々は、少量のヒアルロニダーゼを繰り返し投与することが、大量の単回投与よりもヒアルロン酸の分解動態を改善することを示した。)9
つまり、一度に大量の薬を入れるのではなく、少量を複数回に分けて投与するほうが効率よく分解できるということです。一度で完全に消し去るというよりも、経過を慎重に見ながら回数を重ねていくことがあります。
未承認医薬品を用いる治療について(法令に基づく記載)
医療広告等ガイドラインに基づく記載
当院で使用するヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)製剤について、以下をご確認ください。
- 未承認医薬品であること:本剤は、医薬品医療機器等法上の承認を得ていません。
- 入手経路:記載予定
- 国内の承認医薬品の有無:同一の成分・性能を有する国内承認医薬品は記載予定。
- 諸外国における安全性等の情報:記載予定
- 公的救済制度の対象外であること:国内で承認を受けた医薬品による健康被害には医薬品副作用被害救済制度がありますが、未承認医薬品の使用は、この救済の対象になりません。
しこりを起こしにくくするために、当院が大切にしていること
治療後に起こる反応を、事前に完全に予測することはできません。そのうえで、リスクを最小限に抑えるために当院が「施術前の判断の段階」で大切にしていることをお伝えします。
入れる「層」を、製剤の「硬さ」に合わせて決める。 前述のとおり、製剤の硬さと適した層には対応関係があります。ご希望の部位に対して、どの製剤をどの層に入れるかを、骨格・脂肪・筋肉・皮膚の状態を診たうえで判断します。
「量」を、その部位が受け止められる範囲にとどめる。 一度の治療で一気に理想の形を作ろうとすると、その部位に対して過剰な量になり、しこりや不自然さの原因となることがあります。少しずつ、適切な量を見極めます。
診察をもとに、その方に必要な治療を見極める。 ご希望の部位が、お顔全体のバランスから見て今回の治療に適しているかを診察のうえで判断します。別の部位への治療をご提案したり、時期をあらためてご相談したりすることもあります。そのときは理由をあわせてご説明します。
リスク・副作用
ヒアルロン酸注入には、しこり以外にも以下のリスクがあります。
よくみられる反応
国内で承認されている製剤の臨床試験(ほうれい線への注入、60名対象)において、処置後2週間以内に報告された症状は次のとおりです3。
| 症状 | 報告された方の割合 |
|---|---|
| 圧痛(押すと痛い) | 68.3% |
| 腫れ | 66.7% |
| 内出血 | 58.3% |
| 発赤(赤み) | 50.0% |
| 痛み | 45.0% |
| かゆみ | 13.3% |
これらの多くは、7日以内に自然に消失したと報告されています。
まれに起こる重い合併症
製剤の添付文書には、次の警告が記載されています。
本品を血管内に注入しないこと。注入部位の顔面解剖学を十分に理解した上で使用すること。[過って血管内に注入した場合や、血管や弱い組織を穿刺・圧迫した場合、壊死、潰瘍又は瘢痕を生じるおそれがある。まれに遠位部の塞栓により視力障害/失明及び脳梗塞を起こすおそれがある。]3
国内のあるクリニックグループが、2020年10月から2024年4月までの290,307件の注入部位を調査した報告では、重篤な合併症(感染2件、血管閉塞10件)の発生率は0.0041%でした4。
分解酵素の注射についても、注射である以上、腫れ・内出血・アレルギー反応などのリスクがあります。
費用・治療期間
- 治療内容:ヒアルロン酸製剤の注入/ヒアルロン酸分解酵素の注射
- 費用:料金確定後に記載※自由診療のため公的医療保険は適用されません
- 治療期間・回数:記載予定
- 主なリスク・副作用:上記「リスク・副作用」をご参照ください
ご不明な点は、当院までお問い合わせください。
よくあるご質問
- しこりは自然になくなりますか。
- ヒアルロン酸は時間とともに分解・吸収されるため、製剤そのものによるふくらみは、経過とともに目立たなくなることがあります。ただし、遅発性結節のように原因が製剤の量以外にあるものは、時間の経過だけで解決するとは限りません。触れて気になる状態が続く場合は、診察をお勧めします。
- 他院で受けた注入のしこりも相談できますか。
- ご相談いただけます。ただし、使用された製剤が分からない場合、分解のされやすさを事前に判断することが難しくなります。 可能であれば、施術を受けた医療機関で使用製剤をご確認のうえお越しください。
- マッサージで散らせますか。
- 自己判断でのマッサージはお勧めしていません。添付文書には、皮膚が白くなった場合の対応としてマッサージの記載がありますが、これは注入直後に医師が行う処置についてのものです3。時間が経ってから生じたしこりに対して、ご自身で強く圧迫することは、状態によっては勧められません。まず診察をお受けください。
出典・参考文献
本文中の番号と対応しています。
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Liu X, Gao Y, Ma J, Li J. “The Efficacy and Safety of Hyaluronic Acid Injection in Tear Trough Deformity: A Systematic Review and Meta-analysis.” Aesthetic Plast Surg. 2024;48:478-490. doi:10.1007/s00266-023-03613-7
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公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本形成外科学会・一般社団法人日本美容皮膚科学会ほか『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyo2v.pdf (最終確認日: 2026-08-28)
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ガルデルマ株式会社『レスチレン®リド 添付文書』医療機器承認番号 22700BZX00177000. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/OldPdfData/22700BZX00177000_1_01/1 (最終確認日: 2026-08-28)
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Tamura T, Tamura T, Okumura K, Funakoshi Y, Teranishi H. “Serious Complications of Hyaluronic Acid Fillers—A Retrospective Study of 290,307 Cases.” Ann Plast Surg. 2025;94(6):630-633. doi:10.1097/sap.0000000000004327
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アッヴィ合同会社『ジュビダームビスタ® ウルトラXC 添付文書』医療機器承認番号 22700BZX00139000. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/112130_22700BZX00139000_A_02_01 (最終確認日: 2026-08-28)
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Fundarò SP, Salti G, Hernandez Malgapo DM, Innocenti S. “The Rheology and Physicochemical Characteristics of Hyaluronic Acid Fillers: Their Clinical Implications.” Int J Mol Sci. 2022;23(18):10518. doi:10.3390/ijms231810518
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Convery C, Davies E, Murray G, Walker L. “Delayed-onset Nodules (DONs) and Considering their Treatment following use of Hyaluronic Acid (HA) Fillers.” J Clin Aesthet Dermatol. 2021;14:E59-E67. PMID: 34840652
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Baranska-Rybak W, Lajo-Plaza JV, Walker L, Alizadeh N. “Late-Onset Reactions after Hyaluronic Acid Dermal Fillers: A Consensus Recommendation on Etiology, Prevention and Management.” Dermatol Ther (Heidelb). 2024;14:1767-1785. doi:10.1007/s13555-024-01202-3
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Flégeau K, Jing J, Brusini R, et al. “Multidose Hyaluronidase Administration as an Optimal Procedure to Degrade Resilient Hyaluronic Acid Soft Tissue Fillers.” Molecules. 2023;28(3):1003. doi:10.3390/molecules28031003