「顔がパンパンになってしまうのではないか」
「入れすぎていないか、自分では分からない」
「やめられなくなるのではないか」
ヒアルロン酸注入を続けている方や、これから始めようか迷っている方の中には、こうした不安を持つ方もいらっしゃると思います。
先にお答えすると、「注入されたヒアルロン酸そのものが体内に溜まり続けて顔を変えていく」という考え方は、ヒアルロン酸の特性上考えにくいとされています。美容医療で使用されるヒアルロン酸は、個人差はあるものの、時間の経過とともに体内で分解され、吸収されていく成分だからです。
一方で、実際に「不自然な仕上がり」を感じてしまうケースも、医学の世界で報告されています。これは成分そのものが原因ではなく、「どの部位に」「どの程度の量を注入するか」という治療ごとの判断が積み重なることで生じると考えられています。
この記事では、皆様が納得して治療を選択できるよう、そのメカニズムについて客観的な視点でご説明します。ヒアルロン酸注入の仕組みだけでなく、想定されるリスクや注意点といったところもお伝えしますので、是非治療選びの参考としてください。
ヒアルロン酸は、体内でどうなるのか
ヒアルロン酸は、もともと私たちの体の中にある物質です。
代表的な吸収性フィラーであるヒアルロン酸は,ムコ多糖類の1種で身体の構成成分の1つである.器官または種特異性を持たないため,理論的にはアレルギー反応のリスクはないと言ってよい.(中略)注入されたヒアルロン酸製剤は,生体内のヒアルロン酸と同様に,体内に存在するヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)により緩徐に分解吸収されるが,吸収までに要する期間は製剤の性質や,生体側の諸条件により変動する。10
注入した製剤は、体内にある分解酵素によって、ゆっくりと分解・吸収されていきます。
どのくらいの期間で吸収されるかは、製剤の種類と、注入した部位、そしてお一人おひとりの体質によって変わります。国内で承認されているある製剤の臨床試験では、ほうれい線への注入について「両処置の耐用性は6カ月を超えるものと考えられる」と報告されています1。
製剤ごとに持ちが違うのは、「架橋(クロスリンク)」という加工の有無とその程度によるところが大きいものです。架橋されたヒアルロン酸は分解を受けにくく、体内での持続が長くなります2。
つまり、「入れたものがそのまま残り続ける」わけではありません。時間とともに減っていくからこそ、繰り返しの注入が必要になります。
ヒアルロン酸注入を続けることのメリット
リスクの話をする前に、続けることで得られるメリットと特徴をご説明をさせていただきます。
徐々に元の状態に近づいていく。 注入したものが分解・吸収されるということは、施術後に思ったような形にならなかったときも、時間が味方になるということです。メスをいれる外科手術との一番の違いはここにあります。
必要に応じて「溶かす」選択肢がある。 ヒアルロン酸を溶かすための分解酵素を注射して、入れたヒアルロン酸を溶かすという方法もあります。ただしこの薬には国内での承認がなく、副作用を含めた注意点も存在します。この点については後ほど詳しくご説明します。
半年ほどの単位で見直せる。 国内承認製剤の臨床試験では、ほうれい線への注入について耐用性が6か月を超えると報告されています1。効果が永久に固定されるものではないので、年齢の変化や好みの変化に合わせて、その都度微調整できるのは大きなメリットです。
なお、「注入回数を重ねるほど持ちが良くなる」という説明を目にすることがあります。しかし、当院で確認した限りでは、これを医学的に裏づける明確なデータ(学会の診療指針・添付文書・査読論文)を見つけられませんでした。もちろん、患者さまご自身の実感としてそのように感じられるケースはあるかもしれませんが、当院では「医学的な根拠が不確かなものは、不確かなものとして正直にお伝えする」という姿勢を大切にしています。
「打ち続けると顔が変わる」と言われる理由
では、なぜ「打ち続けると顔が変わる」という声があるのでしょうか。
過量注入という状態
近年、「Facial Overfilled Syndrome(顔面過量注入症候群)」という概念が、美容医療の分野で議論されるようになりました3。
ある海外の医学論文では、この症状について次のように述べられています。
The pathogenesis of FOS extends beyond mere volumetric excess, driven by a complex triad of anatomical mismatch, biomechanical dysregulation, and the cumulative payload of repeated treatments. Clinical hallmarks include resting distortion and unnatural facial animation.
(訳:FOSの発症機序は単なる容量の過剰にとどまらず、解剖学的なミスマッチ、生体力学的な調節の乱れ、そして反復治療による蓄積的な負荷という複合的な三要素によって引き起こされる。臨床的な特徴は、安静時のゆがみと、不自然な表情の動きである。)8
ここで注目していただきたいのは、不自然になる原因は単に「量が多い」ことだけではないという点です。
その方の骨格や組織に合っていない場所に入れること、表情を作る筋肉の動きとの調和が崩れること、そしてそれらが繰り返されて積み重なること。この3つが重なって起こるものだとされています。
そして特徴として挙げられているのが、「安静時のゆがみ」と「不自然な表情の動き」です。つまり、真顔のときだけでなく、笑ったときや話したときの顔の動きに違和感が出てしまうのです。
これが、周りの人から見て「なんだか不自然」「何かしているのかな?」と感じさせてしまう理由です。
注入する層が浅いとき
もうひとつ、見え方に影響するのが、どの深さに入れるかです。
製剤の添付文書には、次のように注意が記載されています。
注入深度が浅すぎると、腫瘤や青変を生じるおそれがある。1
本品の注入が表皮に近いと、しこりや変色が起こることがある。9
皮膚の表面に近すぎる層に入れると、しこりとして触れたり、青みがかって見えたりすることがある、ということです。
この青く見える現象は、しばしば「チンダル現象」という名前で説明されます。ただ、この呼び方については、専門誌で異論も示されています。
The Tyndall effect (and Rayleigh criterion) describe optical phenomenon that occur as light passes through colloidal solutions containing uniform spherical particles… HA fillers are complex, large, non-spherical, cross-linked hydrogels, and thus are not well characterized by these theories.
(訳:チンダル効果(およびレイリー基準)は、均一な球形の粒子を含むコロイド溶液を光が通過する際に生じる光学現象を説明するものである。……ヒアルロン酸フィラーは複雑で大きく、非球形の架橋されたヒドロゲルであり、これらの理論ではうまく説明できない。)11
現象そのものは実際に起こりますが、その光学的な仕組みの説明としては正確ではないかもしれない、という指摘です。当院では、こうした議論の状況も含めてご説明したいと考えています。
なお、この青みの発生頻度について、目の下への注入を対象としたメタ解析では0.9%(95%信頼区間 0.0〜2.5%)と報告されています4。
一部分だけを見てしまうとき
ご自身が気になるパーツは、どうしても実際以上に大きく目立って見えてしまうものですよね。ほうれい線が気になれば、そこを埋めたくなる。頬のこけが気になれば、そこを足したくなる。
けれどお顔は、すべてのパーツがつながった一枚の面のようなものです。もし、気になる一箇所だけにヒアルロン酸を足してしまうと、隣り合う部分とのバランスが崩れてしまうことがあります。その違和感を埋めるために、また別の場所に足す……。こうした部分的な治療を繰り返すうちに、気づけば本来の自然な輪郭や表情から遠ざかってしまうケースも少なくありません。
当院では、気になる部分だけを見るのではなく、お顔全体のバランスから治療を組み立てることを大切にしています。骨格やお顔立ち、その時々の状態を診たうえで、どこを治療するとお顔全体がより良いバランスになるかを考えます。
では、どう考えればよいか
まず診察し、どこを治療するかを考える
ご希望を丁寧に伺い、骨格やお顔立ち、その時々の状態を診察したうえで、治療の内容と時期を一緒に考えます。今回は別の部位への治療をご提案したり、時期をあらためてご相談したりすることもあります。
ご希望とは違うご提案に、驚かれるかもしれません。
しかし、お一人おひとりの骨格・脂肪・筋肉・皮膚などの状態を総合的に診断したうえで、その部位に入れることが全体にどう影響するかを考えると、「入れない」という判断をすることもあるためです。
ご要望の部位に注入することでかえって不自然な影響が出てしまうと考えられる場合は、プロの視点から「入れない」という最善の選択を正直にお伝えしています。
溶かすという選択肢がある
ヒアルロン酸には、外科手術にない大きな特徴があります。分解酵素を注射することで、注入したヒアルロン酸を積極的に分解できるということです。
ただし、ここには正確にお伝えすべきことがあります。
ヒアルロニダーゼ製剤(本邦未承認)を注射することにより,注入されたヒアルロン酸製剤を積極的に分解除去することができるが,その分解程度は製剤によって異なり,分解されにくいものもある。10
この分解酵素(ヒアルロニダーゼ)製剤は、日本国内では医薬品として承認されていません。使用したヒアルロン酸の種類によっては溶けにくいケースもあり、「どんな状態でも、注射一本で完全に元通りになります」と断言できるものではないのです。
それでも、万が一仕上がりに違和感を覚えた際に「修正するための選択肢が残されている」ということは、注入治療を検討するうえで知っておいていただきたい事実です。
やめたら、どうなるのか
「一度始めたら、やめられなくなるのではないか」というご不安をよくうかがいます。
結論から申し上げますと、注入をやめた途端に急激にお顔が崩れるようなことは起こりません。
注入したヒアルロン酸は時間とともに分解・吸収されるため、やめれば少しずつ注入前の状態に近づいていきます。
ただし、事前にぜひ知っておいていただきたいことがあります。それは、ヒアルロン酸の効果が続いている期間も、自然な「加齢による変化」は等しく進んでいるということです。
そのため、いざ治療をやめてヒアルロン酸が吸収されたとき、鏡を見て「やめたら急に老けてしまった」と驚かれる方がいらっしゃいます。しかしこれは、注入をしたことで状態が悪化したわけではありません。ヒアルロン酸によって綺麗にカバーされていた年月の変化が、成分の吸収とともに「再び見えるようになった」というのが本当のところです。
リスク・副作用について
ヒアルロン酸注入には、以下のリスクがあります。
よくみられる反応
国内で承認されているある製剤の臨床試験(ほうれい線への注入、60名)で、処置後2週間以内に報告された症状は次のとおりです1。
| 症状 | 報告された方の割合 |
|---|---|
| 圧痛 | 68.3% |
| 腫れ | 66.7% |
| 内出血 | 58.3% |
| 発赤 | 50.0% |
| 痛み | 45.0% |
| かゆみ | 13.3% |
多くは7日以内に消失したと報告されています。
まれに起こる重い合併症
製剤の添付文書には、次の警告が記載されています。
本品を血管内に注入しないこと。注入部位の顔面解剖学を十分に理解した上で使用すること。[過って血管内に注入した場合や、血管や弱い組織を穿刺・圧迫した場合、壊死、潰瘍又は瘢痕を生じるおそれがある。まれに遠位部の塞栓により視力障害/失明及び脳梗塞を起こすおそれがある。]1
きわめてまれですが、血管に入ってしまった場合、皮膚の壊死や、視力障害・失明、脳梗塞につながる可能性があります。
頻度について、国内のあるクリニックグループが2020年10月から2024年4月までの290,307件の注入部位を後ろ向きに調査した報告では、重篤な合併症(感染2件、血管閉塞10件)の発生率は0.0041%でした5。血管閉塞10件のうち8件は前額部(おでこ)に集中していたと報告されています。
失明について、国際的なコンセンサス論文では、報告数は世界で146〜190例と示唆されており、実際には過少報告の可能性があるとされています6。同論文では、失明例の部位が鼻部(56.3%)、眉間(27.1%)、前額部(18.8%)に集中していたことも示されています。
当院が解剖学に基づく判断を重視し、リスクを事前にご説明するのは、この可能性がゼロではないためです。
遅れて出る反応
注入から2週間以上、ときには3〜4か月経ってから、しこりや硬結が生じることがあります。原因は製剤の移動、遅延型の過敏反応、細菌のバイオフィルム、肉芽腫など複数が考えられており、その仕組みは十分には解明されていません7。
費用・治療期間
- 治療内容:ヒアルロン酸製剤の注入
- 費用:料金確定後に記載※自由診療のため公的医療保険は適用されません
- 治療期間・回数:記載予定
- 主なリスク・副作用:上記「リスク・副作用について」をご参照ください
ご不明な点は、当院までお問い合わせください。
よくあるご質問
- 入れすぎていないかどうか、自分で分かりますか。
- ご自身で判断するのは難しいと考えています。鏡は毎日見ているため、少しずつの変化に気づきにくいためです。前述した過量注入の特徴に「安静時のゆがみ」と「不自然な表情の動き」が挙げられていますが8、これは動いているときに現れるため、鏡の前の静止した顔では分かりません。写真や動画で確認する、信頼できる方に聞いてみる、といった方法をお勧めしています。
- どのくらいの間隔で受けるものですか。
- 製剤・部位・体質によって持続期間が異なるため、一律にはお答えできません。当院では、前回の状態を診たうえで、その都度ご相談して決めています。
- 日本で承認されている製剤はありますか。
- あります。医療機器として国内で承認され、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が情報を公開している製剤が存在します19。一方で、学会の診療指針は「承認品もあるが,未承認品も広く使用されている」とも記載しています10。当院で使用する製剤については、カウンセリングの際にご説明します。
出典・参考文献
本文中の番号と対応しています。
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ガルデルマ株式会社『レスチレン®リド 添付文書』医療機器承認番号 22700BZX00177000. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/OldPdfData/22700BZX00177000_1_01/1 (最終確認日: 2026-08-28)
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Fundarò SP, Salti G, Hernandez Malgapo DM, Innocenti S. “The Rheology and Physicochemical Characteristics of Hyaluronic Acid Fillers: Their Clinical Implications.” Int J Mol Sci. 2022;23(18):10518. doi:10.3390/ijms231810518
-
Peng CX, Xv W, Ao YJ. “A Review: Causes, Consequences, and Management Strategies of Facial Overfilling.” Clin Cosmet Investig Dermatol. 2025;18:1857-1864. doi:10.2147/ccid.s539888
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Liu X, Gao Y, Ma J, Li J. “The Efficacy and Safety of Hyaluronic Acid Injection in Tear Trough Deformity: A Systematic Review and Meta-analysis.” Aesthetic Plast Surg. 2024;48:478-490. doi:10.1007/s00266-023-03613-7
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Tamura T, Tamura T, Okumura K, Funakoshi Y, Teranishi H. “Serious Complications of Hyaluronic Acid Fillers—A Retrospective Study of 290,307 Cases.” Ann Plast Surg. 2025;94(6):630-633. doi:10.1097/sap.0000000000004327
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Goodman GJ, Magnusson MR, Callan P, et al. “A Consensus on Minimizing the Risk of Hyaluronic Acid Embolic Visual Loss and Suggestions for Immediate Bedside Management.” Aesthet Surg J. 2019;40(9):1009-1021. doi:10.1093/asj/sjz312
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Baranska-Rybak W, Lajo-Plaza JV, Walker L, Alizadeh N. “Late-Onset Reactions after Hyaluronic Acid Dermal Fillers: A Consensus Recommendation on Etiology, Prevention and Management.” Dermatol Ther (Heidelb). 2024;14:1767-1785. doi:10.1007/s13555-024-01202-3
-
Zhou C, Che Q, Zhao R, Wang H, Wa Q. “Facial Overfilled Syndrome: A Narrative Clinical Review.” Clin Cosmet Investig Dermatol. 2026. doi:10.2147/ccid.s600459
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アッヴィ合同会社『ジュビダームビスタ® ウルトラXC 添付文書』医療機器承認番号 22700BZX00139000. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/112130_22700BZX00139000_A_02_01 (最終確認日: 2026-08-28)
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公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本形成外科学会・一般社団法人日本美容皮膚科学会ほか『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/biyo2v.pdf (最終確認日: 2026-08-28)
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Rootman DB, Lin JL, Goldberg R. “Does the Tyndall effect describe the blue hue periodically observed in subdermal hyaluronic acid gel placement?” Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2014;30(6):524-527. doi:10.1097/iop.0000000000000293